中秋の名月の日に毎年行われる唐招提寺の観月讃仏会。素晴らしすぎた。ドキドキしているうちに記事を書いてしまおうと思っていたら日付をまたいでしまっていた。
週末に参加が叶った「天平會」で観月讃仏会のことを教えていただいた。年にたった一度だけ、中秋の名月の日だけ、金堂の御簾(?)が全て上げられて巨大な国宝三尊(廬舎那仏坐像、薬師如来立像、十一面千手観世音菩薩立像)がその全容を現わされるとのことだったので、これは是非行かねばと仕事が終わった6時半に自転車に飛び乗った。今日はレッスンがいっぱいで疲れてもいたが、常にワクワクが勝つ。
外はゆっくりと暮色に染まる時間で、すでにまあるい大きな月が東の空にあった。自宅から西ノ京の唐招提寺までは自転車で30~40分かかるが、途中秋篠川沿いの京奈和自転車道(京都嵐山から和歌山港までを繋ぐ180㎞のサイクリングコース)を走ると気持ちが良い。唐招提寺に7時頃着いて自転車を置く。6時ごろから始まった法要や裏千家のお献茶は終わっている頃の時間なので、人出もやや落ち着き始めたようだ。すでに辺りは暗い。
金堂
南大門前に立つとはるか先の金堂の中が黄金に輝いて、三尊がはっきりと見える。もうこれだけでも有難すぎて涙目だ。拝観料も無く、誰でも入ることが出来る。奈良、太っ腹すぎませんか?南大門から境内を進んで金堂に近づいていくともう大迫力である。暗い境内に輝く金堂。中央には廬舎那仏坐像が500尊あまりの小さな仏をその光背に背負って三千世界を照らしていらっしゃる。西行法師の「何事の おわしますかは知らねども かたじけなさに涙こぼるる」という句が大好きなのだが、まさに「かたじけなさに涙こぼるる」美しさである。
東京でこんな行事があったら黒山の人だかりで金堂に近づけもしないだろうなあ。。。などと感慨にふけりながらふと前を見ると、廬舎那仏坐像の正面に天平會の代表のMさんがいらした。後ろ姿だが、すっとお背が高いのですぐわかる。タイミングをみてお声かけしたら、また優しくいろいろ教えてくださった。有難い~~。Mさんが幼いころからこの観月讃仏会はあったそうなので、すでに70年近くは続いている会のようだ。
境内にはたくさんの灯篭が足元に置いてあるので暗い中も道に迷わずに移動することができた。樹影濃い築地塀の境内に灯篭というハートを射抜かれる環境。金堂の輝く三尊像だけでも大満足だった私だが、どうやら御影堂も公開になっているらしいと知り、そちらへ。
御影堂
御影堂には国宝の鑑真和上像が祀られており、通常は非公開で年に数回だけの開扉だ。普段の参拝時は開山堂にある和上様の身代り像を拝むが、今日はなんと本物を拝めるという。御影堂に行くと受け付けがあり、500円をお支払いして前庭へ。もちろん御影堂の門から先は完全に撮影禁止である。
月明かりの前庭から眺める御影堂をどう表現したらよいのか、私には言葉が無い。宸殿の間と上段の間の前庭側の戸が全て開けられ、東山魁夷画伯によるエメラルドグリーンの障壁画が目の前いっぱいに広がる。鑑真和上と弟子たちが越えてきた波濤が音を立てているようだ。左から5,6枚目の襖が開けられていてその中に国宝鑑真和上像が静かに座っていらっしゃる。もう衝撃的に美しく、再読したばかりの井上靖「天平の甍」のシーンが思い出されて、またここでも「かたじけなさに涙あふるる」状態となった。
前庭の暗がりに目を凝らすと、とても立派な月見のお供えがされていた。そして上には明月である。
こればかりは実際に来ていただかないと。。。来年の中秋の名月の日に奈良にいらっしゃれる方がいたら是非お連れしたい。
気づいたこと、私のiPhoneでは月の写真は難しい。。。
帰り道の30分はまさに夢心地。あー素晴らしすぎた。