我が家の朝は常に一杯のお味噌汁から。少し具沢山にして、野菜多め。季節の野菜をあれこれ使って、たまに豚バラを入れてしっかり目にしてみたり、夏はナスや茗荷でさっぱりしたり。私がここ数年毎朝使っているのが奈良の北京終にある創業1864年井上本店さんの五徳味噌。優しく自然で、優しく甘く豊かな風味が今のところ一番のお気に入り。
私が奈良好きだからこの五徳味噌を選んで買ったわけではない。東京の佃に住んでいた頃にマンションの下に良いスーパーがあり、全国の美味しい調味料が多く揃っていた。当時まだ自分の好みピッタリのお味噌が見つけられずにいた私はそのスーパーのお味噌のラインナップを片っ端から試していて、数年目にして「これ!このお味噌!」と思ったのが井上本店の五徳味噌だった。五徳味噌にはまってからしばらくはそれが奈良の味噌だということも知らなかった。ある日、「あれ、このお味噌どこのかしら?」とパッケージの裏を見て「あ、奈良。。。それも北京終だから奈良市内だわ」と初めて井上本店さんのことを知った。
奈良に越してきてみるとこちらの良いお店の多くが井上本店さんの味噌や醤油を使っているのを知り、「やっぱり美味しいもの」と一人満足。
五徳味噌の「五徳」とは
井上本店さんによると
1.郷土の食文化を伝承し
2.微生物が醸す力をフルに引き出し
3.原料の持ち味を生かし、
4.自然の摂理に従って、
5.ゆっくりと時間をかけて
の五つの徳を示しているそう。このお味噌は京域(大和、山城、摂津、河内、泉)地方に古くから伝わる多麴の赤みそを再現したもののようで、穏やかな味が特徴。少し間違えて多めに入れてしまっても塩辛くなったりしないのが良い。白みそ「万葉小町」(名前が素敵ですよね!)も美味しくて、合わせみそにしたり、いろいろに活用している。
少し前に奈良のJWマリオットホテルで鉄板ダイニングを楽しんだ際に出てきた醤油味の調味料(もろみのようなものだった)がとても美味しくて、思わず「これはどちらのですか?」と伺ったら「井上本店さんです」と言われて「なんと、やっぱり!」と嬉しい出会い。
井上本店さんはお味噌だけでなく、醬油やその他の調味料も作られているので近々京終のお店に伺いたいと思っている。
9月のお彼岸を過ぎて少し涼しくなったころに北京終のお店を訪ねた。お店の女将さんがとても親切にしてくださってお醤油やポン酢などたくさん味見させていただく。お味噌は使っていたが、お醤油はまだだったので今回はそれが目的。普段使いのお醤油はまだ家にあるので、ちょっと特別なものを選んだ。どれも素材だけの本当にキリっと混ざり気のないお味。これから使うのが楽しみだ。
古代ひしお
醤油のルーツとされる穀醤(こくびしお)を再現したもの。藤原京時代に醤の製造が制度化される。光明皇后が設けた写経所に従事する人々に与えられた食物の中に醤類があり、正倉院文書にも豊富に記録が残っている。
万葉集の巻16・3829に「醤と酢と野蒜(のびる)を合せたものを鯛につけて食べたいのに、水葱を入れた汁物が出てガッカリ」という歌があるそうだ。
「醤酢に蒜搗きかてて鯛願ふ 我にな見えそ 水葱の羹(あつもの)」
いつも人間は食いしん坊である。
お味噌の作り方のレシピまでいただいてしまった。