古梅園 室町時代から440年続く墨の家

奈良は本当に底知れない、と思わされることが多い。古梅園さんの存在もそのひとつ。移住前に5日間ほどお試しで奈良に滞在しながらリモートでいろいろ仕事を試してみていた時、夕暮れの奈良町を自転車で走っていてすごい家の前を通り過ぎた。あまりにも凄すぎて、自転車を止めて戻って覗いていたら事務所の奥から女性が出てきてくれて「何か御用ですか?」と。「あまりにも素敵なので、どんなお家なのかと見とれていました」というと「墨を扱っている家です。良ければ中をご案内することもできますよ」と言われ、喜んで!と翌日のツアーの予約を入れた。日が暮れた奈良町は静かな闇の中に溶け込んでいて、お店の看板などははっきり見えなかったのだ。パンフレットをもらって嬉々として滞在先のエアビーに戻った。

煤取りの作業場。注連縄にぐっときてしまう。

古梅園ツアー

翌朝、約束の時間に訪れて明るい日の光の中で見せてもらった古梅園さんは凄すぎてしばらく口が開いたままになるくらい。「うわあ。。。」という声しか出てこない。近鉄奈良から徒歩でたった5分の立地に千坪の敷地を今も維持している古梅園さん。その敷地の中には古来からの墨づくりのための全ての施設が整っている。「この建物を有形文化財にしろというお話はたくさんありますし、その方が補助とかももらえていいのですが、有形文化財になってしまうといろいろ規制が多くなってやりにくいんです。うちは今も墨づくりしていますから。」というお話もちらっと。最近は海外のアーティストの方から画材としての墨の要望も多いそう。いつまでも古梅園さんが現役でいられますように。

ツアーでは実際に墨を作る過程を一通り見せていただくことができる。圧巻は煤取りの作業と、職人さんが煤と膠を混ぜた墨の元を素足で練り上げる過程(ここだけは写真NGだった)。ここで私が全てを説明するよりも、是非古梅園さんのツアーに参加してその素晴らしさを知ってほしい。ちなみに墨づくりは膠が腐るので冬にしか行われない。11月~4月頃と仰っていた記憶だ。

菜種油がこよりを伝って燃えたあとの煤が上に被せてある皿状のものに吸着する。15分おきに皿を90度回して1時間で回収する、という作業を毎日。こよりが細いほど細かい煤ができるので上質な墨ができる。
墨は干すものだと知っていましたか?それも40年も50年も。。。古梅園ではあなたの生まれた年の墨を買うことができます。

古梅園さんがホームページに掲げる「墨と生きる」 まさにそれを実感するツアーでした。

この記事を書いた人

Chrononaut M

慶應義塾大学文学部史学科卒、コロンビア大学ティーチャーズカレッジ英語教授法(TESOL) 修士。Q-Leap株式会社 取締役
2024年に東京から奈良に転居。

外資2社に計10年ほど勤務。その間Chicago、NY、Geneveに計4年駐在。結婚と子育てで一旦仕事を離れ、10年間の専業主婦時代を過ごす。3人の子育て中に再度社会に戻るために本格的に英語をやり直し、2011年にコロンビア大学ティーチャーズカレッジでTESOLを取得、

2014年にビジネス英語研修会社 Q-Leap を愛場吉子と共同設立。企業のエクゼクティブ担当として数多くのプライベートレッスンを現在も手がけている。Q-Leapは今年設立10年を迎えた。「明日の日本代表に真の英語力を!」がスローガン。

コロナ禍にほぼ全てのレッスンがリモートで可能になり、残りの人生は好きなところに住んで好きな仕事をすることに。2024年夏に奈良に転居し、自分の記録として、また多くの人に奈良の魅力を知ってもらいたくChrononaut Naraを立ち上げる。

現在は奈良と東京の2拠点で活動中。奈良8割、東京2割。
推しは、藤原不比等と聖武天皇と早良親王。。。書いているときりがない。