万葉集の「あさがほ」

午前中のレッスンを二つほど終えてお昼前に思いついて春日大社の萬葉植物園を訪ねてみた。この暑さ、そして9月初旬というタイミングなので花もあまり咲いていないかもしれない。残暑厳しい日でもあったので、夏に咲いた大賀蓮も葉を除いてすっかり茶色くなっていたし、盛りと思われる萩なども水不足なのかあまり元気がなかった。

そんな中、生き生きと咲き誇っていたのは女郎花だった。
手に取れば 袖さえにほふ をみなえし この白露に 散らまく惜しむ(2115番)

ここでは万葉集の歌とそこに詠まれている花が一緒に見られるのが嬉しい。のんびりと歩いていると、万葉集に「あさがほ」と呼ばれている花はどうやら私たちの知る「朝顔」ではないらしいことがわかった(今更)。植物や万葉集に詳しい人にとっては当たり前の事なのかもしれないが、「あさがほ」候補には4つあるらしい。ムクゲ、ユウガオ、アサガオ、キキョウだ。

園芸春秋の608号「万葉集の『あさがほ』考」によると、詠まれた歌から推察できる「あさがほ」の特徴は

1.秋の七種の内なので花期は旧暦7月から9月(新暦の8月から10月)(1538番の歌による)
萩の花 尾花葛花 なでしこの花 をみなえし また藤袴 あさがほの花
2.「秋の野に咲く花」で草花であること(この1537番の後に上記の1538の歌となる)
秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種の花
3.朝から夕方まで咲いている(2104番の歌による)
あさがほは 朝露負ひて 咲くといへど 夕影にこそ 咲まさりけれ
4.「あさがほ」は目立つ花である=花の色がはっきりしている(2274番の歌による)
こいまろび 恋はしぬとも いちしろく 色には出でじ あさがほの花
5.花穂を持つ植物(2275番の歌による)
言に出でて いはばゆゆしみ あさがほの 穂には咲き出ぬ 恋もするかも

ところが全ての条件を満たす花は無いらしい。
今のところ1~4の条件を満たす「キキョウ」が万葉集で歌われている「あさがほ」とする説が最も一般的なようだ。



帰りがけ、出口近くに苗木が売っていて、大和橘を見つけたので買ってしまった。ちゃんとお世話できるだろうか。

この記事を書いた人

Chrononaut M

慶應義塾大学文学部史学科卒、コロンビア大学ティーチャーズカレッジ英語教授法(TESOL) 修士。Q-Leap株式会社 取締役
2024年に東京から奈良に転居。

外資2社に計10年ほど勤務。その間Chicago、NY、Geneveに計4年駐在。結婚と子育てで一旦仕事を離れ、10年間の専業主婦時代を過ごす。3人の子育て中に再度社会に戻るために本格的に英語をやり直し、2011年にコロンビア大学ティーチャーズカレッジでTESOLを取得、

2014年にビジネス英語研修会社 Q-Leap を愛場吉子と共同設立。企業のエクゼクティブ担当として数多くのプライベートレッスンを現在も手がけている。Q-Leapは今年設立10年を迎えた。「明日の日本代表に真の英語力を!」がスローガン。

コロナ禍にほぼ全てのレッスンがリモートで可能になり、残りの人生は好きなところに住んで好きな仕事をすることに。2024年夏に奈良に転居し、自分の記録として、また多くの人に奈良の魅力を知ってもらいたくChrononaut Naraを立ち上げる。

現在は奈良と東京の2拠点で活動中。奈良8割、東京2割。
推しは、藤原不比等と聖武天皇と早良親王。。。書いているときりがない。