徐々に奈良ベースの生活にも慣れ、東京でのお仕事もリモートで変わりなく続けながら奈良での活動範囲を徐々に広げるように努力中。
現在九州に上陸した大きな台風が列島を縦断中だ。奈良も大変な雨になるのではないかと危惧していたが、今のところ大丈夫のようだ。天気予報のアメダスをテレビで何度も見せられているうちに気づいたのだが、雨雲はいつも吉野山塊に遮られて奈良の北部や京都の南部にはあまりやってこない。これがいつもの事なのかどうかは分からないが、1300年前の木造建築がまだ立っているというだけでも奈良(そして京都も)は災害には強いのかもしれない。
さて、そうは言っても急な雨が降るかもしれないので、登山用の雨具をリュックに入れて自転車で春日大社国宝殿に掲題の展示を見に行く。
8月11日から始まったばかりの展示にも関わらず、会場には私しかいない。
中国人観光客は周りにたくさん居るのだが、皆入場料がかかる(たった500円)と分かると入らない。こんな素晴らしいものを500円で見られるのだから隣のカフェでアイス食べるよりこっちでしょ、とお勧めしたくなるがそれは余計なお世話。
展示はあまりにも素晴らしく、想像していたよりもずっとずっと良かった。超絶技巧の国宝と雲龍庵さんの作品に老眼鏡をガラスケースに何度も当ててしまった、、、これが500円で見られるなんて。。。奈良恐るべし。
1000年以上伝わる春日漆の最高傑作、琴や宝剣といった国宝の数々と向こう100年を超えて残す覚悟で世界に向けて作られた雲龍庵北村辰夫さんの繊細すぎる作品が一緒に並んでいる様子は正に時空旅行。本当に眼福とはこのことかと思う。今年は年初に能登の大地震があり、輪島塗の職人さん達が甚大な被害を受けられた。それもあり、雲龍庵さんの作品のコレクターであるA氏からの申し出でこの展示が実現したそうだ。
個人蔵となっている雲龍庵作品の数々。ため息つきながら拝見した。漆の宇宙、全ての細部に神様が宿っていて、美術品に魅入られて何を犠牲にしても手に入れたくなる人の気持ちを少し体験できた。「欲しい〜!」。
こんな素晴らしい作品の数々をコレクターとして集めていらっしゃるA氏はどんな方なのだろうか。
展示会場にあった縦6.5メートル、横4メートルくらいの鎌倉時代の鼉太鼓の存在感にも圧倒された。彩色は剥落し、古色蒼然としているのだが、まるで南大門の仁王像を見上げるような気持。。。と思っていたら鎌倉仏師が彫ったものだとか。久しぶりにハートを射抜かれた。
こちらは写真OKの1階の展示にあった復刻版の鼉太鼓。
こちらの素晴らしい展示は12月半ばまでの会期なので是非。