夜の東大寺散歩

夕食の後にちょっと運動も兼ねて転害門から入って二月堂まで散歩する。大仏殿の裏を通り、二月堂に上がるのは距離も勾配もちょうどいい感じだ。今日は台風の影響もあまりなく、夕方から涼しい風が吹いていたので気持ちよく歩いてきた。ところどころ草を食んでいたり、角を木の幹にこすりつけていたりする鹿に遭遇しつつ、二月堂へ。

昼間は観光客と鹿でごった返している境内も、夜の8時も過ぎれはほとんど人影もなくしんと静まり返って、夏の終わりなら虫の声と水の流れる音だけしか聞こえない。ところどころに街灯はあるものの、一歩踏み込めば漆黒の闇と隣り合わせ。街の隅々まで明るい現代の都会では味わえない陰影の豊かさがまだここには残っている。時間と人とに磨かれた空間だからこそこの闇がさらに美しいものとなっていると思う。


二月堂へは24時間上がることができる。ここからは奈良の街と生駒山が綺麗に見えて、昼でも夜でも大好きな場所。かなり大きくなった?代めの良弁杉が空に向かって真っすぐ伸びているのも気持ちよい。

奈良の素晴らしさはスカイラインが昔のままであること。余計な近代的なビルなどなく、視界を邪魔するものがない。空を見上げれば空しかなく、遠くを見ても自然の地形が優勢なので心からほっとする。

目の前の風景に癒されながら、かつて娘の小学校の校庭の裏にニョッキリと六本木ヒルズが立ち上がった時の何とも言えない残念な感じを思い出した。無機質で巨大なダンゴムシがいきなり立ち上がったようなビル。そこには調和は無く、自己主張があるのみという印象だった。1000年経ったら廃墟としてすら存在しないかもしれない。

ここでは1000年の時間に感謝し、夏は冬を想い、冬は夏を想う。そして春と秋はいつでも待ち遠しい。

この記事を書いた人

Chrononaut M

慶應義塾大学文学部史学科卒、コロンビア大学ティーチャーズカレッジ英語教授法(TESOL) 修士。Q-Leap株式会社 取締役
2024年に東京から奈良に転居。

外資2社に計10年ほど勤務。その間Chicago、NY、Geneveに計4年駐在。結婚と子育てで一旦仕事を離れ、10年間の専業主婦時代を過ごす。3人の子育て中に再度社会に戻るために本格的に英語をやり直し、2011年にコロンビア大学ティーチャーズカレッジでTESOLを取得、

2014年にビジネス英語研修会社 Q-Leap を愛場吉子と共同設立。企業のエクゼクティブ担当として数多くのプライベートレッスンを現在も手がけている。Q-Leapは今年設立10年を迎えた。「明日の日本代表に真の英語力を!」がスローガン。

コロナ禍にほぼ全てのレッスンがリモートで可能になり、残りの人生は好きなところに住んで好きな仕事をすることに。2024年夏に奈良に転居し、自分の記録として、また多くの人に奈良の魅力を知ってもらいたくChrononaut Naraを立ち上げる。

現在は奈良と東京の2拠点で活動中。奈良8割、東京2割。
推しは、藤原不比等と聖武天皇と早良親王。。。書いているときりがない。