美保神社 大山を望むエビス様の大本山

島根半島の突端近くの小さな入り江に面したこの神社の事を知ったのは出雲大社への参拝を計画してからだった。出雲大社、美保神社、そして日御碕神社の三社をめぐることを出雲三社詣というらしい。美保神社に祀られている神様は三穂津姫命と、皆さんもおなじみの事代主神、つまりえびす様だ。古事記や日本書紀によると、えびす様は出雲大社に祀られている大国主命の長男で、三穂津姫命は大国主命の妻らしい(えびす様の生母かどうかは不明)。そのような理由で出雲大社と美保神社には親と子が祀られていることになり、両方とも縁結びの神でもあるのでダブルでご利益があると言われている。ちなみに日御碕神社に祀られているのはアマテラスとスサノオで、スサノオは大国主命の祖先なのでここも血縁関係で繋がっている。大国主命はスサノオが与えた試練に耐え、葦原の中つ国の主となり、国造りに成果を上げた後、アマテラスに国譲りをし、そのかわりに出雲大社を賜った、というのが出雲国譲り神話の概略。出雲の旅では日本の神話を少し知っているとそれぞれの神社を訪ねた時に楽しみが増えるのでおすすめ。

アクセス

さて、車以外でこの神社にたどり着くには相当の時間の余裕が必要そうだ。出雲エリアを巡るには、レンタカーを活用することが最も効率的だ。今回の旅では飛行機で出雲に入り、レンタカーをしてあちこち回って最後は米子空港から戻るプランにした。美保神社は島根半島の東の突端を目指していけば必ずたどり着くのでほぼ一本道でとても分かりやすい。
空いている時期ならば問題ないが、7日エビスの日や正月などは小さな港の周りにある駐車場が車で溢れてしまい、駐車場探しに時間がかかる場合もあるので気を付けたほうが良い。

御祭神

―三穂津姫命(ミホツヒメノミコト)

五穀豊穣、夫婦和合、安産、子孫繁栄、歌舞音曲

―事代主神(コトシロヌシノカミ)(えびす様)

海上安全、大漁満足、商売繁盛、学業、歌舞音曲

縁起

古文書の上では733年編纂の出雲風土記にすでに名前が出ていることで、すくなくとも8世紀前半には社があったと考えられる。HPには境内から4世紀ごろのものと思われる勾玉の破片や、6世紀ごろと思われる雨乞い用の土馬などが出土しているので風土記の時代を遡ってここが何らかの祭祀が行われる場所だったと考えられると書いてある。


自然環境的にも島根半島の東のほぼ突端にあり、自然の入江に面し、海を挟んで鳥取の大山が波の向こうに雄大にそびえるこの場所は思わず祈りを捧げたくなる場所だ。

御神徳・ご利益

五穀豊穣、夫婦和合、安産、子孫繁栄、海上安全、大漁満足、商売繁盛、学業、歌舞音曲

歌舞音曲のご利益に関しては、北前船の風待ちの場所としても交通の要衝であり漁港でもあった美保関では「関の明神さんは鳴り物好き」という船人たちの口伝があり、全国から海上安全などを願って多くの楽器類が奉納されてきた歴史がある。

HPによると「平成4年には明治の初頭以来途絶えていた「歌舞音曲奉納」を100年ぶりに復活させ、一流の演奏家が神前に向かって(聴衆に背を向けて)演奏し、聴衆は一切の拍手をしないという独特の音楽祭が行われています。」とのことで、これは古来神にささげるものであった能においても観客の拍手を求めない、というスタイルと合致している。

境内

―本殿(重要文化財)

向かって右の左殿に三穂津姫命、向かって左の右殿に事代主神を祀り、この二社の間を「装束の間」で繋いでいる特殊な形式(美保造また比翼大社造とも呼ばれる)。

―拝殿・神門・回廊

昭和3年の造営で檜材

―パワースポット

本殿の裏に回ると側溝の中に可愛い亀の石像がある。裏山を通ってこの石像の前から流れ出ている湧き水は枯れたことがないため、とても縁起が良いとされていて、私が訪ねた時も小さなお子さんを連れたご家族が亀の甲羅に硬貨を載せようと(これが結構バランスが難しい)頑張っていてほほえましかった。目の前に裏山が迫っていて、静かで落ち着く場所だ。

7日えびすのくじ引きの結果を待つ人たち

授与品

えびす様を祀っているのでえびす様や鯛に関連したものが楽しい。こちらの絵馬は絵が鯛で紐が普通のものよりかなり長めなのは釣り糸をイメージしているからだそう。

美保神社は全国のえびす神社の総本宮で、毎月7日が「七日えびす」とよばれ、抽選で特別な金の鯛がついたお守りを買うことができる。そのくじを引くために境内は黒山の人だかりとなる。この日、なんとうちの夫が見事くじを当てて金の鯛をいただいてしまった。中身は秘密。

見どころ

参道内から鳥居越しに美保港を望むととても美しい。晴れた日には海の向こうに大山も見える。鳥居を出てすぐ左側にある「青畳横丁」という江戸時代からの旅館街の道はコロナ以降かなり廃れてしまったようだが、かつてはかなり賑わっていたと聞いた。とても細い道だが、少し昔の雰囲気を感じられるかもしれない。

この記事を書いた人

Chrononaut M

慶應義塾大学文学部史学科卒、コロンビア大学ティーチャーズカレッジ英語教授法(TESOL) 修士。Q-Leap株式会社 取締役
2024年に東京から奈良に転居。

外資2社に計10年ほど勤務。その間Chicago、NY、Geneveに計4年駐在。結婚と子育てで一旦仕事を離れ、10年間の専業主婦時代を過ごす。3人の子育て中に再度社会に戻るために本格的に英語をやり直し、2011年にコロンビア大学ティーチャーズカレッジでTESOLを取得、

2014年にビジネス英語研修会社 Q-Leap を愛場吉子と共同設立。企業のエクゼクティブ担当として数多くのプライベートレッスンを現在も手がけている。Q-Leapは今年設立10年を迎えた。「明日の日本代表に真の英語力を!」がスローガン。

コロナ禍にほぼ全てのレッスンがリモートで可能になり、残りの人生は好きなところに住んで好きな仕事をすることに。2024年夏に奈良に転居し、自分の記録として、また多くの人に奈良の魅力を知ってもらいたくChrononaut Naraを立ち上げる。

現在は奈良と東京の2拠点で活動中。奈良8割、東京2割。
推しは、藤原不比等と聖武天皇と早良親王。。。書いているときりがない。